Vol.36 鼻にまつわるいいハナシ。

「さつきまつ花たちばなの香をかげば昔の人の袖の香ぞする」
は古今和歌集にある夏の歌。
橘の花の匂いでかつての恋人を思い出すなんてロマンチックですね。
また、マルセル・プルーストの「失われた時をもとめて」という小説にあるのは、主人公がマドレーヌと紅茶の匂いで幼い時の記憶を思い出すという場面。匂いが記憶を呼び起こす事がプルースト現象と名付けられるほど有名なくだりです。そしてこの匂いと記憶の関係。実は明確な理由があるんです。匂いの行きつく先は脳の「扁桃核」。記憶を司る「海馬」と連係する器官です。匂いと記憶の関係が深いのも納得ですね。

また、この「扁桃核」とは快不快を判断する場所でもあります。いい匂いで気分が良くなるのはこのせいなんですね。更に、いい匂いには実際に体調を整える効果も。アロマセラピーは、それを上手く利用したものです。そもそもアロマセラピーとは、いい匂いで人間の心身を癒すという意味。アロマオイルの芳香成分が働いてリラックス作用はもちろん、肩こり、不眠やストレスによる不調などの改善効果もあるといわれています。お風呂の時にオイルを数滴入れるだけでも有効ですよ。心にも体にもいい匂い。毎日の生活に取り入れて、元気に夏をお過ごしください。

掲載年月 2002年07月

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