申請方法:世帯合算と多数回該当
※本記事は2020年2月28日現在のものです。

医療保険に「高額療養費支給申請書」を提出
家族が同時に病気やけがで受診し、それぞれの一部負担金は高額療養費の自己負担限度額まで届かなくても、合算して自己負担限度額を超えていれば、申請することで高額療養費の支給を受けられます。「世帯合算」という仕組みです。
この場合の世帯とは、住民票上の世帯とは異なり、同じ医療保険に加入している家族となります。大住家のように、祖父(後期高齢者医療被保険者)、祖母(国民健康保険被保険者)、父(国民健康保険被保険者)、母(被用者保険被保険者)、子(被用者保険の被扶養者)の5人が同居している場合、同じ医療保険に加入している祖母と父、母と子は合算できます。
医療保険上「世帯」のイメージ

○厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ」より作成
○厚生労働省「難病の患者に対する医療等に関する法律の概要」より作成
合算にはもうひとつ条件があり、70歳未満の場合は、それぞれの自己負担が21,000円を超えた場合のみ合算できます。

世帯合算できるケース
1)同じ月に同じ世帯で2人以上の人が医療機関を受診した場合(同じ世帯なので合算できる)

世帯の負担上限額=
80,100円+{(祖母の医療費250,000円+父の医療費150,000円)-267,000円}×1%=81,430円
(祖母の自己負担75,000円+父の自己負担45,000円)-81,430円=38,570円
高額療養費 38,570円
2)同じ月に複数の医療機関で受診した場合(75歳以上なので21,000円未満でも合算できる)

外来自己負担上限:18,000円
祖父の自己負担 :20,000円
(A病院での自己負担7,000円
+Bクリニックでの自己負担9,000円
+C診療所での自己負担3,000円
+D歯科での自己負担1,000円)
20,000円-18,000円=2,000円
高額療養費 2,000円
3)同じ月に同じ医療機関の入院と外来で受診した場合(21,000円以上なので合算できる)

自己負担上限 =
80,100円+{(入院の医療費200,000円+外来の医療費150,000円)-267,000円}×1%=80,930円
(入院の自己負担60,000円+外来の自己負担45,000円)-80,930円=24,070円
高額療養費 24,070円
ケース1)2)3)とも、厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ」より作成
高額な医療費が継続するときは「多数回該当」で負担が軽くなる
病気などで長期の療養が必要となり、高額な医療費を継続して払い続けなければならない場合もあります。高額療養費が支給され、自己負担が約9万円程度(年収約370万~約770万円の場合)に抑えられたとしても、毎月その金額を負担するのは大変です。その負担を軽くするために、「多数回該当」という仕組みがあります。
これは、直近12カ月のなかで、高額療養費の支給を受けた月が3回ある場合、4回目からは自己負担限度額が引き下げられるもので、さらに負担が軽くなります。ただし、転職などで健康保険組合から国民健康保険に移るなど、途中で加入する医療保険が変わった場合は、変わる前の医療保険で高額療養費の支給を受けた回数を通算できません(協会けんぽに加入していて、転職などで管轄する都道府県支部が変わっただけの場合は、通算されます)。
多数回該当のイメージ(70歳未満 年収約370万~約770万円の場合)

厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ」より作成