レビー小体型認知症の症状
監修:筑波大学大学院 人間総合科学研究科 教授 水上 勝義 先生
レビー小体型認知症の症状には、「認知機能の低下」に加え、レビー小体型認知症の診断あるいは疑いに必要な「中核的特徴」と、それ以外に体と心に現れる「支持的特徴」があります。
「認知機能の低下」に加え、中核的特徴が1~2つある場合、レビー小体型認知症またはレビー小体型認知症の疑いとして診断されます。
支持的特徴は中核的特徴が現れるより数年前から見られることがあります。
診断に必要な「中核的特徴」
レビー小体型認知症の診断に必須の症状は、物忘れなどに代表される認知機能障害です。
また、診断に必要で、多くの患者さんに見られる症状として、認知機能の変動、幻視、睡眠時の行動異常、パーキンソン症状などがあります。
認知機能の変動
認知機能障害として物忘れや判断力・理解力の低下などの症状が現れますが、病初期にはあまり目立ちません。
また、受け答えや判断力に問題がない状態と、ぼーっとしていて反応が薄い状態を周期的に繰り返します。
幻視
「そこにないはずのものが見える幻視」や、「幻視や錯視が妄想に発展する」ことがあります。これらの症状のため、統合失調症などの精神疾患との鑑別が難しい場合があります。
睡眠時の行動異常
睡眠中に…
- 夢を見て突然大きな声で叫ぶ
- 怒鳴る
- 手足をばたつかせて暴れる
- 暴力をふるう
などの異常な行動が現れることがあります。
こういった行動は睡眠が浅い「レム睡眠」のときに起こることから、「レム睡眠行動障害」と呼ばれています。レビー小体型認知症患者さんの中には、発病する何年も前からレム睡眠行動障害が見られることがあります。そのため、睡眠時の行動異常の有無は診断に大切な情報です。
レム睡眠と睡眠のリズム
ヒトの眠りには大脳を活性化するための「レム睡眠」と大脳を休ませるための「ノンレム睡眠」があります。寝入りばなの数時間はノンレム睡眠でぐっすりと眠り、その後は浅い眠りのレム睡眠に切り替わります。ノンレム睡眠とレム睡眠を数回繰り返すことで脳を休め、かつ、すっきりと目覚めるための準備をしています。
パーキンソン症状
動きにくい・動きが鈍い、手足のこわばりやふるえ、姿勢を保ちにくくなって転びやすいといった運動機能の障害(運動症状)が現れます。
- 動きにくい
- 動きが鈍い
- 手足がこわばる
- 手足がふるえる
- 姿勢を保ちにくい
- 転びやすい
これらの症状はパーキンソン病の症状とよく似ているため、パーキンソン病と診断されて、他の症状が見逃されてしまうおそれがあります。運動症状が悪化すると着替えが難しくなったり、表情が乏しくなったりするなど日常生活に支障をきたします。また、食べ物を飲み込みにくくなり、誤嚥のおそれが増加します。
パーキンソン病とは
パーキンソン病は、体を動かすための神経伝達物質※ドパミンが作られにくくなって発症する病気です。数十年かけてゆっくり進行し、手足がふるえるなどの運動症状を特徴とします。ドパミンは脳幹の中脳で作られますが、パーキンソン病患者さんの脳幹のドパミンを作る神経細胞にはレビー小体が現れ、神経細胞が減ってしまっていることがわかっています。
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感情や体のコントロールをつかさどる物質。脳から分泌される。
体と心に現れる「支持的特徴」
中核的特徴以外で体と心に現れる症状には、自律神経症状、嗅覚鈍麻(嗅覚障害)、抑うつなどがあります。
自律神経症状
自律神経※をつかさどる交感神経と副交感神経のバランスが悪くなり、
- 倦怠感(けんたいかん)
- 寝汗をかく
- 便秘
- 起立性低血圧
- 頻尿
- 立ちくらみ
などの症状が現れることがあります。
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※
血圧や呼吸、内臓のはたらきを支配する神経。
嗅覚鈍麻(嗅覚障害)
嗅覚が鈍くなり、
- 腐敗臭やガスの臭いに気がつかない
- 香水やコロンをつけすぎる
- 料理がおいしく感じない
など、日常生活に支障をきたすことがあります。
認知機能障害よりも数年早く現れることがあります。
抑うつ
- 何をするにも意欲がわかない
- 食欲がわかない
- 気持ちが晴れない
などのうつ症状や不安症状が、病初期から現れることがあります。
また、レビー小体型認知症患者さんでは、悲しくなる、不安で落ち着かない、などの訴えをされることもあります。
レビー小体型認知症の特徴
レビー小体型認知症の症状は多彩です。
そのため、他の病気との鑑別がとても難しい病気です。
例に挙げた症状以外にも気になる症状や体調・気分の変化を感じたら、主治医にお伝えください。