ファブリー病の治療

ファブリー病の治療には、酵素補充療法とシャペロン療法と症状を緩和させる対症療法があります。

酵素補充療法

ファブリー病は、「α-ガラクトシダーゼ」という酵素が欠損したり、活性が低下しているために起こる疾患です。
酵素補充療法は、欠損したり活性の低下している「α-ガラクトシダーゼ」を製剤化した薬を点滴で補充し、体内で蓄積している糖脂質(GL-3)を分解・代謝する治療法です。症状の改善や病気の進行をおさえることができます。
日本では現在、3つのバイオ医薬品(1つのバイオ後続品を含む)がファブリー病の酵素補充療法治療薬として認められています。

薬の投与方法

薬の投与方法

体重によって必要な量が決まっていて、その量を2週間ごとに点滴で補充します。
1回の投与に40分から2~3時間ほど時間をかけて薬を点滴します。

酵素補充療法の副作用

薬の投与中、または投与終了後1時間以内に、以下のような症状が現れることがあります。

このような症状が出た場合には、すぐに周囲にいる医師、看護師に伝えてください。
点滴速度を遅くしたり、投与を一時中断すること、抗ヒスタミン薬や副腎皮質ホルモン剤などの投与をすることで、症状を緩和させることが可能です。

その他の副作用としては、倦怠感や四肢疼痛(ししとうつう)、下痢、流涙(りゅうるい・なみだ目の意味)増加、振戦(ふるえ)、めまい、注射をさした箇所のかゆみや腫れ(はれ)などが報告されています。

また、薬に対する抗体ができる場合もあります。抗体ができることにより、薬の効果が減弱することがあります。しかし、ほとんどの場合で薬を続けて使うことにより、抗体が少なくなったり、薬の効果が回復しています。

これらの他にも、投与中や投与後に気になる症状やいつもと違う症状が現れた場合は、必ず医師または看護師に相談してください。

バイオ医薬品・バイオ後続品とは

バイオ医薬品とは


ファブリー病治療における酵素補充療法は、身体の中で作られるタンパク質を補う治療であり、バイオ医薬品が使われています。バイオ医薬品とは、遺伝子組み換えや細胞培養という技術を利用して開発・製造された、主にタンパク質を有効成分とする医薬品のことです。つまり、遺伝子を用いた高度な技術によって人工的にタンパク質を作り、医薬品にしたものです。
バイオ医薬品は、大量生産が難しく、原材料等が高価で、大規模な製造設備が必要なため、お薬の値段が高価になってしまいます。

バイオ後続品(バイオシミラー)とは


バイオ後続品(バイオシミラー)とは、すでに新医薬品として承認されている先行バイオ医薬品と同等・同質の品質、安全性・有効性(効果や副作用など)を示す医薬品として、通常、先行バイオ医薬品を開発・製造する会社とは異なる会社で開発・製造されたバイオ医薬品のことです。 バイオ後続品は、先行バイオ医薬品よりお薬の値段が安くなるため、医療費の削減が期待されます。

シャペロン療法

シャペロン療法

シャペロン療法は、低分子物質を経口で投与することにより、残存する酵素活性を活性化させる治療法です。そのため、本治療法は全く酵素ができない遺伝子変化や酵素活性をもたない遺伝子変化などには効果がありません。したがって、本治療法を行うに際しては、酵素活性のみならず遺伝子変化の診断が必要になります。
ファブリー病では現在、ひとつの薬剤が日本で認められています。本剤に反応性のある、遺伝子の変化を伴うファブリー病患者さんのみが投与可能となります。

対症療法

四肢疼痛(ししとうつう)

末梢神経障害に効果のある薬剤が痛みをおさえるのに有効です。しかし、個人差もありますので、痛みを引き起こす原因となる体力の消耗、ストレス、急激な温度変化、疲労などをなるべく避けるように心がけましょう。

胃腸障害

胃腸の運動を改善する薬が投与される場合があります。

腎機能障害

症状の悪化を防ぐため、腎臓を保護したり、蛋白尿を改善させる効果があるACE阻害剤という種類の薬が投与される場合があります。
また、日ごろより、腎臓に負担をかけない食事を心がけましょう。
症状が悪化してしまったときは、血液透析、腎移植などが行われることもあります。

心機能障害

心臓の症状に応じて、強心剤、抗不整脈薬、ACE阻害剤、利尿剤などの薬物が投与される場合があります。
また、ペースメーカーの装着やバイパス手術が行われることもあります。

脳血管障害

対症療法

血栓(けっせん)ができないようにするために、抗血小板剤が投与される場合があります。

監修:名古屋セントラル病院 ライソゾーム病センター・血液内科
センター長 坪井一哉

TSUNAGUについて

TSUNAGU はファブリー病患者さんの声とドクターの声をかたちにしたノートです。

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