安全に料理をするために気をつけたいこと|料理・調理の工夫

安全に料理をするために気をつけたいこと

リハビリ監修:作業療法士 廣瀬哲司先生/理学療法士 杉浦将太先生

ご自宅で、無理なく楽しく、何より安全に料理をするためのコツや工夫をご紹介します。
料理など、日常生活での活動は、それ自体がリハビリにもなります。安全に実践するために、まずはキッチンまわりを整理し、積極的に動いても事故が起こりにくい安全な環境を整えましょう。
ここでは、「リハビリのために料理をはじめようと思うけど、何から準備すればいいの?」という疑問にお答えしています。できるところから取り組んでみてください。

1.キッチンを整理し、休憩できる場所を確保する

キッチンまわりを整理する

POINT

  • キッチンの床に余計なものは置かず、調理台の上もすっきりと
  • 調理中疲れたときのために、休憩できる場所を
  • キッチンの動線上に目印をつくっておく

キッチンまわりの床には、できるだけものを置かないようにします。必要のないものは片付け、コード類は壁沿いに固定しましょう。また、キッチンマットなどの敷物は、端につまずいて転びやすいため、敷かないようにします。また、調理台の上は、調理器具やお皿を調理工程ごとに必要なものだけを出すようにすると、すっきりします。
 
調理中疲れたときのために休憩できる場所をつくり、椅子を用意しておくことも大切です。椅子は、背もたれのあるものがよいでしょう。
 
調理中の立ち位置から歩き出しにくくなった場合に備えて、キッチンの動線上に目印をつくっておくのもおすすめです。床にテープを貼っておいたり、テーブルの脚などを目標にしたりして、そこまで足を伸ばすように意識すると一歩目が出しやすくなります。

2.安全に料理ができる環境を整える

安全に料理ができる環境を整える

POINT

  • キッチンにはとっさのときに体を支えられる場所を確保する
  • 食器棚など、家具はしっかりと固定する
  • よく使う調理器具は手の届く範囲に置く

リハビリのポイントは体を大きく動かすことですが、そのためには安全な環境が確保できている必要があります。

キッチンの中で、とっさにつかんで体を支えることのできる手すりや支柱がある場所を、あらかじめ確認しておきましょう。新たに手すりを設置する場合は、作業の際に使いやすい高さが基本になります。

食器棚などの家具は、倒れることのないようしっかりと固定しておきましょう。冷蔵庫や棚などは、扉を開いた際に転倒しないよう注意する必要があります。どこまで開くのか、キッチンにある開き戸をあらかじめ調べておき、床に印をつけておくとよいでしょう。

また、安全に料理をするためには、調理器具や食器の収納場所を工夫することも大切です。重いフライパンや鍋を高い棚の上に置いたり、よく使う調理器具を調理台の下の奥などの手が届きにくい場所にしまったりすると、出し入れの際にバランスを崩し、転倒につながることがあります。調理器具や食器は取り出しやすいところに収納しておきましょう。

3 姿勢をチェックできるものを用意しておく

POINT

  • 調理中はときどき姿勢を確認する
  • 姿勢をチェックできる姿見(鏡)や目印を用意する

調理中、一つの作業に集中していると、上半身が前傾してきてしまうことがあります。
曲がった姿勢のまま長時間調理を続けることのないよう、ときどき自分の姿勢を確認できるものを近くに用意しておきましょう。
 
キッチンから見える場所に姿見(鏡)を置くほか、家具などに自分の姿が映るガラス扉などがあれば、それを利用するのもよいでしょう。また、柱や窓枠などの垂直なものを目印にして姿勢を修正する方法もあります。

4.火を使う調理のときはコンロまわりの安全を心がける

火を使う調理のときはコンロまわりの安全を心がける

POINT

  • 鍋やフライパンを火にかけるときの取っ手の向きに注意する

調理に火を使うなど、コンロを使用する際は安全に心がけて調理を進めます。

鍋やフライパンをコンロにおいて火にかけるときは、奥か真横に取っ手を向けるようにすると、衣服や体が引っかかりにくくなります。

なお、可能であれば、コンロはガスや火を使わずに調理できるIH調理器を、水道の蛇口は扱いやすいレバータイプのものを取り入れるのもおすすめです。

5.作業するときは調理台の安定した場所で

作業するときは調理台の安定した場所で

POINT

  • まな板やボウルを使う際は布巾などを敷いて安定させる

調理台で作業をする際は、まな板やボウルの下にぬれ布巾や吸盤付きのすべり止めマットを敷くと、まな板やボウルが安定して作業がしやすくなります。
 
また、まな板やボウルを安定させる布巾やすべり止めマットは段差のないところに敷くようにしましょう。不安定な場所で作業を行うと、まな板やボウルが斜めになったりぐらついたりするため危険です。

6.料理は体が動きやすい時間帯に

料理は体が動きやすい時間帯に

POINT

  • 薬を服用し、体を動かしやすい時間帯を把握する
  • ご家族や介助者などと、ふだんから話をする

料理に取り組むにあたっては、きちんと薬を服用し、体を動かしやすい時間帯を把握しておくことも大切です。薬が効いていて活動しやすい状態のときに調理ができるよう計画を立て、決して無理はしないようにしましょう。
 
体が動きやすい時間帯に合わせて、下準備と調理を分けて行うのもよいでしょう。ご自身が動きやすいと感じる音楽があれば、調理中に流しておくとリズムを作ることができ、体が動きやすくなります。

また、ご家族などと薬を服用したあとの体の調子など、動きやすい時間帯についてあらかじめ話をしておくと、急に動きづらくなった場合もサポートが得られるので安心です。

7.パーキンソン病患者さんのご家族・介助を行う方へ

パーキンソン病患者さんのご家族・介護を行う方へ

POINT

  • 患者さんの前向きな気持ちを理解してサポートする
  • 今より一歩先のチャレンジを患者さんと一緒に考える
  • 患者さんの挑戦を後押しできる環境を作る

パーキンソン病患者さんが「料理をしたい」と言うと、安全に行えるか心配になるかもしれません。しかし、多くの患者さんは、さまざまなことにチャレンジしたいという前向きな気持ちを持っています。
 
お互いの思いのバランスを取りながら、「ちょっと頑張ったらできるかな」というレベルの作業を一緒に考えてみましょう。工程を簡単にするばかりではなく、患者さん自身が「これをやってみよう」と思えるような選択肢を示してあげることも大切です。成し遂げられた達成感が得られれば、「またやりたい」「料理を続けていきたい」という意欲が湧きます。
 
また、パーキンソン病患者さんの体調には波があり、調子のよいときもあれば悪いときもあります。料理をしようと計画した日に体調が整わないことがあると、せっかくの患者さんの意欲がそがれてしまうこともあるため、ご家族にもゆとりのある週末から料理をはじめてみるなど、さまざまな工夫を考えながら、患者さんの挑戦を後押しできる環境をつくっていきましょう。

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