便利な調理器具と使い方の工夫|料理・調理の工夫

便利な調理器具と使い方の工夫

リハビリ監修:作業療法士 廣瀬哲司先生/理学療法士 杉浦将太先生

パーキンソン病患者さんが調理器具を使う際は、どのようなことに注意すればよいのでしょうか。今まで使用していた道具でも、ちょっとした工夫で扱いやすくなることがあります。また、新しく便利な調理器具もいろいろと登場しています。
 
ここでは、パーキンソン病患者さんが調理器具を取り扱う際の注意点や工夫のほか、使いづらくなった道具の代わりに活用したい便利なグッズなどもご紹介します。
自分に合った使いやすい調理器具を見つけ、楽しく料理に取り組みましょう。

*「7.パーキンソン病患者さんのご家族・介助を行う方へ」のコラムに、この章で紹介した器具などを購入する際のご案内を記載していますので、参考にしてください。

1.こぼさずに計量する工夫

キッチンまわりを整理する

上からのぞくと内側の目盛りが読めるタイプの計量カップは、調理台に置いたまま計れるので便利です

POINT

  • 計量スプーンが使いづらいときは、計量カップを活用する
  • 計量カップの目盛りを読むときは、転倒しないように手すりなどをつかむようにする

計量スプーンが使いづらいときは、計量カップを活用してみましょう。計量スプーンのように何度もはかる必要がなく、台に置いて計量することができるので、こぼしてしまう心配がぐっと少なくなります。
 
計量カップを調理台などに置いて横から目盛りを読むときは、転倒しないよう安全な手すりなどをしっかりつかんでかがみましょう。つかむところがない場合やかがむのが難しい場合は、自分の目線の高さの台や棚に計量カップを置いて、目盛りを読むようにします。
 
上からのぞくと内側から目盛りが読める計量カップも販売されています。体の状態に合わせて、安全でやりやすい方法を選びましょう。

2.計量不要の便利な調味料入れを活用する

計量不要の便利な調味料入れを活用する

出したい分量の部分を押すと約10cc、約15ccが出せる便利な調味料入れも

POINT

  • よく使う調味料は計量不要の調味料入れを活用する

よく使う調味料は、一定量だけが出てくるように設計された調味料入れに詰め替えておくと、計量せずに必要な分量を取り出すことが可能です。

液体調味料入れには、容器を押す力の強さで出す量を調節できるタイプのものや、ポリボトルの表面にある2か所の印を同時に押し込むと一定量が注げるようになっているタイプのものなどもあります。これらは、倒れても中身がこぼれにくいという点でも安心です。

粉末調味料も、ボトルを一度傾け、それをまた戻すことで一回分の使用量が手軽に計量できる便利な粉末調味料入れがあります。出しすぎを防ぐこともでき、便利です。

3.安定感のある調理器具を選ぶ

安定感のある調理器具を選ぶ

底の部分が平らなガラスボウル(左)はより安定感があり、取っ手付きのボウル(右)は片手で押さえながら作業でき、使いやすい

POINT

  • ボウルや鍋などの調理器具は安定感のあるものを選ぶ
  • 布巾やすべり止めマットなどと合わせて使うとさらに安定する

調理器具は、不意に手が当たっても倒れにくく、安定感のあるものを選びましょう。

材料を混ぜ合わせたりこねたりするときに使うボウルは、プラスチックや金属製のものより重量感があるので、ガラス製がおすすめです。なかでも、底が平らでおけのような形状をしたガラスボウルは安定感があり、布巾やすべり止めマットを下に敷いておくと、がたつかずに作業することができます。ステンレス製でも、取っ手付きのボウルであれば、固定しやすく使いやすいでしょう。

4.包丁を使って切るときのコツと工夫

包丁を使って切るときのコツと工夫

包丁を使うときは脇を締めるようにすると、力が入りやすくなります

POINT

  • 包丁を使うときは脇を締めてゆっくりと動かす
  • かたい食材はあらかじめ電子レンジで加熱し、やわらかくする
  • 転がりやすい材料などを切るときは無理をせずにご家族や介護の方のサポートを

包丁で切るときの一番のポイントは、包丁を持っていない方の手で、切る材料をしっかりと固定することです。包丁は静かにゆっくりと動かしましょう。このとき脇を締めるようにすると、力が入りやすくなります。また、包丁は柄の部分が大きく、全体のサイズも大きめのものがおすすめです。
 
かたい食材は、柄に近い刃元から包丁を押し込むと、切りやすくなります。また、あらかじめ電子レンジで加熱しやわらかくしておくと、比較的楽に切ることができます。転がりやすい材料を扱うときは、決して無理をせず、ご家族などと一緒に調理を進めましょう。

5.包丁が使いづらいときは

包丁が使いづらいときは

キッチンばさみは指を入れる部分が広く開いたもの、刃は短めのものがおすすめ。ピーラーは持ち手の面積が広く端に向かって幅が太いものを

POINT

  • 包丁が使いづらいときはキッチンバサミを活用する
  • 食材の皮をむくときは包丁よりもピーラーが便利
  • 症状に合わせて、使いやすい調理器具を選ぶ

包丁が使いづらいときは、キッチンばさみを使いましょう。鶏肉のようなすべりやすい材料も、はさみなら上手に切ることができます。キッチンばさみは、指を入れる部分が広く開いており刃が短めのものを選ぶと、少ない力で切ることができ安全です。

皮をむくときは、包丁よりもピーラーが向いています。ピーラーにはさまざまな種類がありますが、持ち手の面積が広く端に向かって幅が太くなっている形状のものを選ぶと、手から抜け落ちにくく力も入れやすいでしょう。

受け容器の付いた大きめのスライサーは、台に置いて作業ができるため、安定性の高い調理器具の一つです。材料を刺して固定できるホルダーがセットになっているものを使えば、より安全に切ることができます。

ご家族や介助の方とも相談しながら、症状に合わせて使いやすい調理器具を選びましょう。

6.菜箸の代わりにトングを活用する

菜箸の代わりにトングを活用する

POINT

  • 食材やできた料理をつかむときは、菜箸よりも力を加えやすいトングを活用する

細い菜箸は、手先に力が入れづらいとつかみにくく、使っているうちにバラバラになりやすいなど、扱いにくさを感じることもあると思います。菜箸の代わりになる道具としては、トングが使いやすいでしょう。菜箸よりも力を加えやすいためすべりにくく、混ぜるときにもつかむときにも便利です。持ち手が広めで握りやすく、バネが強すぎないものを選びましょう。

7.パーキンソン病患者さんのご家族・介助を行う方へ

パーキンソン病患者さんのご家族・介護を行う方へ

患者さんと一緒に便利な調理器具を見つけてあげることも、患者さんが無理なく安全に料理するための工夫の1つ

パーキンソン病患者さんは、使う道具や環境、声かけによって大きく動きが変わってくることがあります。また、感覚が徐々に鈍ってくると、ご自身では判断しづらい場面も出てきます。そのため周囲からの気づきは、安全に料理を行うための重要な要素になります。
 
パーキンソン病患者さんの介助をされる方ご自身が日頃から積極的に料理に携わり、調理者の目線を体験することも大切です。買い物に行った先で便利な商品を見つけたり、作業しやすい調理方法を思いついたりすることが、患者さんが無理なく安全に料理をするための工夫にもつながっていきます。
 
患者さんと一緒に料理をしながら、どんな道具があると便利か、どんなやり方なら負担なくできそうかなどを話し合い、楽しく取り組んでいきましょう。

*この章で紹介した調理器具は、量販店やオンラインショップなどで購入できます。オンラインショップで購入の際は、こちらの検索ワードを入力して検索してください

1.計量カップ:「上から計れる計量カップ」で検索
2.調味料入れ:「計量のいらない調味料入れ 液体」 「計量のいらない調味料入れ 粉末」で検索
3.ガラスボウル:「ガラスボウル スポンジ型」で検索
  取っ手付きボウル:「取っ手付きボウル」で検索
5.受け容器の付いた大きめのスライサー:「受け容器のついた大きめのスライサー」で検索
6.トング:「トング ユニバーサルデザイン」で検索

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