食べにくいと感じたら〜調理の工夫編〜|食事・栄養の工夫

食べにくいと感じたら〜調理の工夫編〜

監修:管理栄養士 江頭文江先生
レシピ監修:株式会社おいしい健康 管理栄養士

おかずやごはんを食べるという行為は食べ物を口に運び、歯や舌を使って噛み砕きすりつぶす「咀嚼」を行い、飲み込みやすい形になったら舌が喉のほうへ送り込んで飲み込む「嚥下」を行います。

この口の中での一連の行為は、各機能の連携によるもので、この連携がとれなくなると「飲み込む」ことが難しくなってきます。
「最近、食べにくいな」「食べるのに時間がかかる」というときは、口の中の動きに留意してみましょう。

ここでは、家族と同じ料理でも、食材の選び方や調理の工夫で「食べやすい」食事になる工夫、手軽な料理を紹介します。

1.口の中の動きに配慮した食材選び

口の中の動きに配慮した食材選び

POINT

  • 調理前の食材選びから工夫してみる
  • 気をつけたい食材や形状を知っておく
  • 調理後(加熱後)の状態にも注目

調理の前に、まず気をつけたいことが食材の選び方です。場合によっては調理方法を工夫しても食べにくいものもあるためです。

例えば、玉ねぎは繊維を断って切ればやわらかくなりますが、長ねぎは繊維を断っても飲み込みにくいため注意が必要です。
また、生のきゅうりのスライスやわかめのように「ペラペラ」したもの、口の中の水分を吸うような「パサパサ」したもの、「サラサラ」した液体はむせやすくなります。

調理後(加熱後)の状態にも注目です。ちくわや蒲鉾などの練り物は、たんぱく質をふくむ使い勝手のよい食材ですが、加熱でやわらかくなるものの、しばらく置くとプリッと締まって弾力がでてしまい噛みにくいことがあります。

注意すべき食材がある一方で、里いも・アボカド・豆腐などは食材同士をつなぎ、飲み込みやすい(嚥下の負担が少ない)料理に仕上げたいときに活躍します。

飲み込むときに負担が少ない食材(例)

  • はんぺん ・サーモン(お刺身)
  • 豆腐 ・温泉卵 ・ヨーグルト
  • 里いも ・アボカド (食材のつなぎとしても活躍)

2.調理の工夫① やわらかくする

調理の工夫① やわらかくする

POINT

  • 肉は、豚バラ肉がやわらかくおすすめ
  • 同じ肉でも部位や種類によって食感が変わる
  • 調理の工夫:粉をまぶす、繊維を断つように切る

肉は、バラ薄切り肉(またはしゃぶしゃぶ用)がおすすめです。
短時間で火が入り、ほどよい脂が入っているため加熱してもやわらかくジューシーに仕上がります。

肉の種類や部位でいうと、豚肉はロースやももは脂肪分が少ない分、加熱後は豚バラ肉と比べて身が締まった仕上がりになります。
牛肉や鶏肉は、やわらかく仕上げるには時間を要するため少し手間は必要です。(下ごしらえにつぶした生パイナップルや塩麹などにつけてやわらかくする方法もあります)

調理の工夫として、食材に粉類を薄くまぶすと口当たりがよくなり、肉汁を逃さないのでやわらかさを保ちます。また野菜を一緒に食べるときは繊維を断つように切って合わせましょう。

3 調理の工夫② つなぎを入れる

調理の工夫② つなぎを入れる

POINT

  • 口の中で食材がまとまると食べやすくなる
  • 食材同士の「つなぎ」になる食材を混ぜる
  • ひき肉は、こねてまとめた形状にする

ほろほろとくずれる食べ物は食べやすいと思われがちですが、ものによっては噛みにくく、飲み込むまでに時間がかかることも。口の中でまとまりやすくするのも、食べやすくなるポイントのひとつです。

例えば料理に、アボカドや里いも、豆腐などを使うと、ほかの食材との「つなぎ」となって、口の中でまとまりやすくなります。
また、ひき肉料理の場合はパラパラとしたそぼろ状にするより、つなぎの粉類を練り混ぜたハンバーグやつくねのほうが食べやすくなります。

4.調理の工夫③ 水分、油分を加える

調理の工夫③ 水分、油分を加える

POINT

  • 水分を足して、やわらかく仕上げる
  • 蒸す、煮るなど調理法で水分の蒸発を防ぐ
  • 油分を足して、なめらかにする

食材に水分を加える調理方法を選ぶことでも食材がやわらかくなります。例えば、葉野菜を出汁で煮た「煮びたし」、パンを牛乳にひたして「フレンチトースト」などがあります。

お肉や魚など加熱によってパサつきやすくなる食材も、部位の選び方と「蒸す」「煮る」など調理方法の工夫で水分蒸発を防げます。

調理時に油分を加えるとなめらかに仕上がり、口当たりがよくなると同時に手軽なエネルギーアップにもなります。
例えばマヨネーズ、バター、生クリームなどがその代表です。

5.調理の工夫④ とろみをつける

調理の工夫④ とろみをつける

POINT

  • とろみがあると飲み込みやすくなる
  • 調理の仕上げにとろみをつける
  • ちょうどよいとろみ加減を覚える

とろみをつけると、料理が口に入ったあとゆっくりとまとまり、喉への動きが緩やかになるため、むせ・誤嚥(ごえん)リスクも低減します。

例えば「つるり」「とろり」とした食べ物は、狭めの咽頭や食道も通過しやすくなります。煮物なら水溶き片栗粉を加える、チャーハンや蒸し魚には「あん」をかけるなど、料理の仕上げをひと工夫。

ただし、とろみをつけすぎるとべったりとし、口の中に張り付いて咀嚼しにくく、飲み込むのが返って困難になることもあります。
ほどよいとろみ加減を覚えましょう。

6.調理の工夫⑤ 飲みやすい汁物

調理の工夫⑤ 飲みやすい汁物

POINT

  • 味噌汁は飲み込むのが意外と難しいので注意
  • 汁物はポタージュにしてエネルギー量もアップ
  • 煮込み料理はシチューなどとろみのあるものに

和食の定番の味噌汁。日常的に口にする機会の多い料理ですが、味噌汁のように「具と汁(サラサラとした液体)を一緒に食べる料理」は実はむせやすく注意が必要です。

少し専門的な話になりますが、液体と固形物の嚥下パターンは異なり、咀嚼中は呼吸していて気道と気管が開いているため、液体も口に含んだ状態で具を噛みながら飲むという行為は、気管に入り込みやすくむせてしまうことが多いのです。

汁物は濃度のある「ポタージュ」にすると飲みやすく、エネルギー量もアップします。また、メイン料理ではさらっとしたポトフより、とろみをつけたシチューにすると食べやすくなります。

7.パーキンソン病患者さんのご家族・介助を行う方へ

パーキンソン病患者さんのご家族・介助を行う方へ

POINT

  • 食べている様子をよく観察する
  • 食べられるものを記録して次にいかす
  • 根気強く試してみる

食材をやわらかくなめらかな状態にすると、口の中での動きがスムーズになり、飲み込みやすくなります。ただ、やわらかすぎると逆に口の中で拡散し、飲み込みづらくなることもあるので注意しましょう。

同じお肉でも、「豚肉は食べやすかったけど、牛肉はダメ」というように、症状や好みによって食べやすいものが異なります。また、滑舌があまりよくなく、うまく言葉で伝えられないこともあります。どんなものなら食べてくれたのか記録し、食べているときの口・口角・舌・のどぼとけの状態をよく観察して、根気強くトライしていきましょう。

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