便秘のお悩み、嗅覚・味覚に不安を感じたら|食事・栄養の工夫

便秘のお悩み、嗅覚・味覚に不安を感じたら

監修:管理栄養士 江頭文江先生
レシピ監修:株式会社おいしい健康 管理栄養士

パーキンソン病の患者さんのなかには、「なんだか便秘ぎみになった」「なんだか食事の味がぼんやりする(匂いや味がうまく感じ取れていなさそうだ)」ということに思いいたる方もいらっしゃるようです。

例えば便秘でもさまざまな要因が考えられますが、気になることがあれば 「食べ方に変化はなかったかな」、「1週間・1ヶ月前と便の出方が違う?」と振り返りながら原因を探ってみることは大切なことです。

ここでは、便秘と嗅覚・味覚障害について、家庭で取り入れやすい対処法やご家族や介助を行う方も一緒に楽しめる、おすすめの簡単レシピをご紹介します。

1.便秘① 十分な量を食べる

便秘① 十分な量を食べる

POINT

  • 便が出ていない理由を考える
  • 食事量が少ないと便の量も減る
  • 十分な量を食べて「かさ」を増やす

「なぜ便秘になっているのか」、まずは食生活を振り返ってみましょう。便が出ていないのは、「一回の食事量が少ないから」という、本来の便秘(排便がない、残便感がある)とは違う可能性も大きいようです。

食事量が少ないと便が出ないのは当たり前。すっきり出すためには「かさ」を増やす必要があります。十分な量を食べて、エネルギーも摂取したうえで排便するという良好な体内循環を目指しましょう。

2.便秘② 3つの解消ポイント

便秘② 3つの解消ポイント

POINT

  • 便秘を解消するための3つのポイント
  • 適した食材でかさを増やし、腸内環境を整える
  • 水分、油分で便をやわらかくする

「十分な量を食べて、エネルギーも摂取したうえで排便する」ために、食事のうえで気をつけたいポイントは次の3つです。

①食物繊維が豊富な食材を取り入れて、便のかさを増やす
②発酵食品やオリゴ糖を取り入れて、腸内環境を整える
③水分、油分を取り入れて、便をやわらかくする

各ポイントについて、食材や簡単にできるレシピとともに説明していきます。

3.便秘③ 食物繊維を取り入れるための食事とレシピ

便秘③ 食物繊維を取り入れるための食事とレシピ

POINT

  • 不溶性食物繊維は、便のかさを増やす
  • 水溶性食物繊維は、便の水分を増やす
  • 2種類の食物繊維をバランスよくとる

食物繊維は、2種類あります。1つは水分を吸ってふくらみ、便のかさを増やして腸のぜんどう運動を促進する「不溶性食物繊維」、もう1つは水に溶けるとゲル状になり、便の水分を増やして排出しやすくする「水溶性食物繊維」です。水溶性食物繊維は、腸内の善玉菌のエサにもなるので、腸の健康維持に役立ちます。

●不溶性食物繊維を含む食品…さつまいも、きのこ、わかめ、もち麦、押麦など

●水溶性食物繊維を含む食品…キウイ、りんご、オクラ、ほうれん草、押麦など

4.便秘④ 発酵食品を活用した食事とレシピ

便秘④ 発酵食品を活用した食事とレシピ

POINT

  • 発酵食品は腸内環境を整える働きがある
  • なかでも乳酸菌は毎日継続してとりたい
  • オリゴ糖は乳酸菌やビフィズス菌のエサになる

ヨーグルトやチーズなど発酵食品に含まれる「乳酸菌」には、腸内の善玉菌を増やし、腸内環境を整える働きがあります。乳酸菌は腸内に定着できないため、毎日継続してとることが大切です。また、糖質の一種「オリゴ糖」は乳酸菌やビフィズス菌のエサになり、腸内環境を整えるアシストをします。

●発酵食品…ヨーグルト、チーズ、キムチ、みそ、甘酒など

●オリゴ糖を含む食品…きなこ、いんげん、ごぼう、小豆、玉ねぎ、はちみつ、にんにくなど

5.便秘⑤ 水分・油分を補うための食事とレシピ

便秘⑤ 水分・油分を補うための食事とレシピ

POINT

  • 便は水分が足りないとかたくなる
  • 油分は排便をスムーズにする
  • 毎日コップ1杯の水を飲み、料理には油をひとかけ

健康な便は70〜80%の水分を含んでおり、水分が足りないと便がかたくなります。油分は排便をスムーズに行うための助けになるため、適度な油分も大切になります。

まずは、毎朝、コップ一杯の水を飲む習慣をつくりましょう。朝一番にのむと、お腹も動き出し、排便を促すことにもつながります。朝が難しい場合は、時間を決めて飲むなど、習慣づけるようにするとよいでしょう。

油分は、煮物や和え物などの料理の仕上げにオイル(ごま油やオリーブオイル)をひとかけするだけでOK。エネルギー量もアップできるから一石二鳥です。

6.嗅覚・味覚障害 日常生活での工夫

嗅覚・味覚障害 日常生活での工夫

POINT

  • おいしくないと感じた理由を考える
  • 口腔ケアで改善できることもある
  • においの違いも気にかける

一概に、料理がおいしくないと感じることが、嗅覚・味覚障害の症状とは限りません。おいしくないと感じたときは、「においがわからない」「味を感じない」「味を感じすぎる」など、その理由を考えてみましょう。

味に関しては、食べる前に口の中の準備が整っていない可能性があります。例えば、「スパイシーなカレーを食べた直後に繊細な煮物を食べると味がよくわからない」というように、食事をするときはきちんと味わえる環境に口をリセットしておくことが大事です。まずは口腔ケアで改善を試みてください。

食べているときに感じるにおいは、食べる前に香るものとは異なります。鼻をつまんで食べてみると、その違いがわかるはず。料理のにおいの多くは咀嚼時に鼻から抜ける香りが大きいのです。ふだんから、においの違いも気にかけておくとよいでしょう。

7.パーキンソン病患者さんのご家族・介助を行う方へ

パーキンソン病患者さんのご家族・介助を行う方へ

POINT

  • 排便の回数や頻度は人により異なる
  • 排便の状況をカレンダーに記録する
  • 食べるときは口内をリセットする

排便の回数や頻度は人により異なり、「便秘」の感覚も変わってきます。ふだん一日に数回排便する人は丸一日空いただけで残便感を覚えることがありますが、2〜3日に一回の人は数日出なくても違和感なく過ごせます。ここで大事なのは、「便秘」を見極められるように通常のペースを把握しておくこと。カレンダーに、「たくさん出たら◎、普通なら○、出なかったら×」とチェックを入れていくとよいでしょう。

嗅覚・味覚障害は、口腔ケアによって改善することもあります。「いつもと少し違う」と感じたら、日々の食生活を見つめ直し、できることを考え、一つひとつ試してみてください。

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