調理の前後にできるストレッチ|料理・調理の工夫

毎日できる・ためせる工夫がここにある

リハビリ監修:作業療法士 廣瀬哲司先生/理学療法士 杉浦将太先生

料理をはじめる前、料理中、料理が終わったあとに行いたいストレッチを、それぞれの場面に合わせて具体的にご紹介します。
 
調理中は火や水を使いますので、周囲の安全を十分に確保して、転倒やけがに気を付けながら、無理のない範囲で行ってください。
 
ここでご紹介するストレッチは、日常生活のさまざまな場面で行うことができます。料理の前後以外でもチャレンジしてみてください。

料理をはじめる前に
1.調理作業に備えて手や腕まわりの関節の柔軟性を高めるストレッチ

料理をはじめる前に、さまざまな調理作業に備えて、関節の柔軟性を高めるストレッチをしておきましょう。

◎手のひらをほぐすストレッチ

  • 両手をしっかり奥まで組んで握る。

◎腕や肘と肩まわりのストレッチ(その1)

    1. 胸の前で両手を組み、まっすぐ前に腕を伸ばす。
    2. そのまま組んだ手を反転させて、手のひらを天へ向け、腕を伸ばす。

◎腕や肘と肩まわりのストレッチ(その2)

    1. 胸の前で両手を組み、まっすぐ前に腕を伸ばす。
    2. そのまま組んだ手を反転させて、手のひらを向こう側へ向け、腕を伸ばす。
    3. その状態のまま、右手を軽く手前に引き、左の手首、肘、腕を伸ばす。
    4. 反対側も同様に、左手を軽く手前に引き、右の手首、肘、腕を伸ばす。
調理作業に備えて手や腕まわりの関節の柔軟性を高めるストレッチ

料理をはじめる前にエプロンをつける動きも、一つのストレッチになります。エプロンをすると気分も変わり、調理中の汚れも気にしなくてすみます。

料理をはじめる前に
2.立ち仕事に備えて上半身のストレッチ

料理をはじめる前に、しばらくの時間の立ち仕事に備えてストレッチをしておきましょう。
  
調理中は上半身の姿勢が崩れやすいため、上半身をほぐすストレッチも効果的です。次のストレッチは立って行ってもよいですし、椅子に座って行ってもよいでしょう。立って行う場合は、両足を肩幅かそれよりもやや広めに開いて行うと、安定して運動を行うことができ、転倒のリスクを減らすことができます。なお、椅子を使って行う場合は、しっかりしていて倒れにくい椅子を使用してください。

◎上半身をほぐすストレッチ(その1)

    1. 肩幅程度に広げた両手でタオルを持ち、まっすぐ上に腕を伸ばす。
    2. ゆっくり回旋させたり前後左右に体を曲げたりして、胸の横や脇腹の筋肉を伸ばす。
立ち仕事に備えて上半身のストレッチ

◎上半身をほぐすストレッチ(その2)

    1. 肘を曲げて頭の後ろで両手を組む。
    2. ゆっくり回旋させたり、後ろに反らしたりして上半身をほぐす。
立ち仕事に備えて上半身のストレッチ

料理をはじめる前に
3.細かい作業に備えて手のひらをほぐすストレッチ

料理をはじめる前に手のひらをほぐすストレッチをすると、手先を使う細やかな作業も行いやすくなります。

◎手のひらをほぐすストレッチ(1)

  • 手のひらを握ってパッと開く。

◎手のひらをほぐすストレッチ(2)

    1. 左手の指先から関節2つを曲げる。3つ目の関節は伸ばす。
    2. 右手の指の間に左手の爪を当てて、右手を握りこむようにする。
    3. 力を入れながら左手首を反るようにする。

※左右の手を入れ替えて行ってください

細かい作業に備えて手のひらをほぐすストレッチ

料理をはじめる前に
4.立ち仕事に備えて下半身のストレッチ

調理中に同じ動きが続いたときや調理工程の合間には、ときおり姿見などを見て、姿勢のゆがみや体の傾きがないか確認するようにしましょう。料理をはじめる前のストレッチを再び行ったり、次に紹介するストレッチを行ったりして、体をほぐしたり伸ばしたりするのもおすすめです。

◎下半身を伸ばすストレッチ(その1)

    1. 立った姿勢から片方の足を後ろに引き、アキレス腱(けん)を伸ばす。
    2. 反対側の足も同様に行う。

◎下半身をほぐすストレッチ

    1. 調理台の前(もしくは椅子の後ろ側)に立つ。
    2. 調理台の端(もしくは椅子の背もたれ)を両手でつかんで支えにし、膝を曲げて軽くしゃがんだあと、まっすぐ立つ。

◎下半身を伸ばすストレッチ(その2)

    1. 調理台の前(もしくは椅子の後ろ側)に立ち、立った姿勢から、左膝を股関節よりも少し後ろまで引く。
    2. 左膝を後ろに引いたまま右膝を軽く曲げ、左の太ももを伸ばす。

    ※反対側の足も同様に行う。

    立ち仕事に備えて下半身のストレッチ

調理中のストレッチは、周囲に危険なものがないことを確認し、安全を確保した上で行いましょう。また、椅子の背もたれを使って行う場合は、しっかりしていて倒れにくい椅子を使用してください。

料理が終わったら
5.椅子を使ってストレッチ

調理中は立ちっぱなしの作業が、食事中は座ったままの状態が続きます。同じ姿勢のまま体が固まっていることがあるので、体を開き、伸ばすストレッチを行いましょう。

◎椅子を使って体を開くストレッチ

    1. 背もたれの付いた椅子に座り、後ろにもたれて腕を開く。
    2.  1.の姿勢から体を広げる。
椅子を使って体を開くストレッチ

椅子を使って体幹と下半身を動かすストレッチ

    1. 四股を踏むように両足を広げる。
    2. 手を膝に置き、肩を前に倒すようにしながら左右に体をひねる。
椅子を使って体幹と下半身を動かすストレッチ

料理が終わったら
6.ふたりで一緒にストレッチ

食事と片付けを終えてひと休みしたら、もう一度、ここまでに行った1〜5のストレッチに取り組んでみましょう。
 
ご家族などに腕や体を支えてもらったり、動かす補助をしてもらいながら行うと、一人で行う場合より大きな動きがしやすく、力を入れにくい部分を動かしたり伸ばしたりすることもできます。
 
食後のストレッチを毎日の習慣にするのもよいでしょう。一人では続きにくい運動も、一緒に行う人がいれば意欲が湧きやすくなりますし、ご家族とコミュニケーションを取りながら触れ合う時間を定期的につくることは、生活に明るさをもたらします。
 
ただし、何でもやりすぎは禁物です。その日の体調に合わせながら、無理のない範囲で行いましょう。

ふたりで一緒にストレッチ

ストレッチを毎日の習慣に。患者さんを支えるときは、肘の付近、肩に近い方を支えてあげてください。無理のない範囲で行いましょう。

7.パーキンソン病患者さんのご家族・介助を行う方へ

パーキンソン病患者さんのご家族・介護を行う方へ

料理ができたら「おいしそうにできたね、アルバムに残しておこうね」など、患者さんへ声をかけてあげることも大切です。

料理が終わったら、その日に頑張った点やうまくいった点を患者さんと一緒に振り返ってみましょう。できたことを目に見える形で残していくと達成感を味わうことができ、「次もやってみたい」という思いの原動力になります。
 
できあがった料理を撮影してアルバムを作ったり、工夫してよかったところやうれしかったことなどを日記や日誌に書き留めたりして、記録するのもよいでしょう。
 
料理を通して患者さんが無理なく楽しくリハビリを続けていけるような仕組みを、一緒に考えつくっていきましょう。