食べにくいと感じたら〜市販品活用編〜|食事・栄養の工夫

食べにくいと感じたら〜市販品活用編〜

監修:管理栄養士 江頭文江先生
レシピ監修:株式会社おいしい健康 管理栄養士

缶詰やチルドのおかずは、やわらかく仕上がっているものも多く、咀嚼・嚥下機能の状況に応じて食事に取り入れることで、作る手間が軽減し、新しいおいしさにも出会えます。また、ひと工夫するだけで食べやすくなるものもあります。

特にひとり暮らしや高齢の方は、毎日1人分を3食調理し続けるのは大変です。ここでは、おすすめの市販品とその活用法、食事への取り入れ方をご紹介します。

「すべてを市販品にするのは抵抗がある」「ごはんは好みのやわらかさにしたい」という場合には、おかず一品だけ市販品にするなど、取り入れ方を自分流にアレンジしてみてください。

1.段階に応じて市販品を取り入れる

段階に応じて市販品を取り入れる

POINT

  • 缶詰やチルド品は、やわらかいものが多い
  • 状況や症状に合った商品を選ぶ
  • 献立に市販品を上手に取り入れる

缶詰やチルド品には、手作りするよりもやわらかいものがあります。例えば、「さばの味噌煮」は、家で生魚から煮ると身が締まって弾力があり、かたく食べづらいことがあります。

その場合は、骨までやわらかい缶詰の「さばの味噌煮缶」に、その缶詰がポソポソしてまとまりづらいと感じたら骨がなくやわらかいチルドの「さばの味噌煮」、それも難しくなったら身をほぐしつぶして「つなぎ」とあえる、さらにはミキサーで混ぜる、というように市販品を組み込みながら段階に合わせていくとよいでしょう。

朝昼晩と献立作りをするのは手間も時間もかかります。魚はチルドおかずにして野菜は調理するなど、市販品をうまく取り入れて、体だけでなく気持ちの負担にならないように心がけましょう。市販品は種類が豊富なので、選ぶ楽しさもあります。

2.献立の一品になるコンビニおかず

献立の一品になるコンビニおかず

POINT

  • コンビニなどには、すぐおかずになる商品が豊富
  • 日々の献立作りの負担を軽減
  • やわらかさや形状を見て食べやすいものを選ぶ

コンビニでみかける市販品にも、咀嚼や嚥下にやさしい食品がたくさんあります。無理なく楽しく、献立に取り入れましょう。

そのままで献立の1品になる市販品のおかずは、とろみのある「とろろ」、じっくり煮てやわらかい「おでん(大根、はんぺんなど)」、つなぎでまとまっている「ハンバーグ」や「つくね」、とろみのある「グラタン」、だしが加わりパサついていない「だし巻き卵」など。

和洋中さまざまなおかずがあるので、いくつかチャレンジして好みの味を見つけてみてはいかがでしょうか。

3.すぐ食べられるコンビニスイーツ

すぐ食べられるコンビニスイーツ

POINT

  • コンビニなどには、スイーツ商品も豊富
  • 食後やおやつに取り入れやすい
  • やわらかさや形状を見て食べやすいものを選ぶ

手作りのおやつもおいしいですが、身近なスーパーやコンビニにも咀嚼や嚥下にやさしい市販のデザートがたくさんあります。
不足しやすいエネルギーの補給などに活用してみましょう。

和菓子では、つるんとした食感で口の中でほどけていく「水ようかん」などがおすすめです。
洋菓子ではつるりとして口の中でつぶれやすい「プリン」、ふわっととろける「ムース」、クリーム多めの「ロールケーキ」はスポンジをクリームでしとらせながら食べられます。

また、口溶けのよい「アイスクリーム」や「ヨーグルト」も食べやすく、いろいろなフレーバーがあるので飽きずに楽しめます。

4.市販品で主食を食べやすくアレンジ

市販品で主食を食べやすくアレンジ

POINT

  • 主食を食べやすくする市販品
  • ごはんは、とろろをかける
  • パンは油分や水分をプラスする

いつもの主食も、市販品を組み合わせると、より食べやすくなります。

例えば、ごはんに「とろろ」をかけると、するっとなめらかになり、口の中での咀嚼し飲み込む動きをサポートします。

パンには「マヨネーズ」をトッピングして、油分で口当たりをなめらかにしつつエネルギー量もアップ。また、卵液にじっくりひたしてから焼く「フレンチトースト」は、ふわっとしてやわらかな食感になります。

5.市販品でおかずを食べやすくアレンジ

エネルギー不足を補う、少量で高栄養のレシピ

POINT

  • おかずを食べやすくする市販品
  • 里いもなど「つなぎ」になる食材を混ぜる
  • みんなで同じものを食べて楽しむためのひと工夫

一見食べにくそうなおかずも、「つなぎ」になる食材を加えることで食べやすくなります。

ゆでてつぶした里いもや豆腐を、煮物や市販の惣菜に混ぜあわせてまとまりやすく。味が淡白で料理の味もじゃまをしません。
ゆでて食べやすくきざんだオクラは、とろみが出るので他の食材と和えものにしてもいいでしょう。例えば(つぶした)はんぺんと混ぜると、互いに「つなぎ」の効果をもたらし、たんぱく質もとれる手軽な副菜になります。

また、この他にアボカドもつぶして混ぜることでまとまりよくなる食材の代表ですが、生のままでも使える点が便利です。
市販のひじき煮を、ご家族はそのままで、患者さんにはアボカドをいれて喉越しとまとまり良く。同じおかずを一緒に食べられるので感想が共有でき、会話も弾みます。

6.飲み込みやすい市販のドリンク

食器や盛り付けで食べやすく

POINT

  • さらさら系はむせやすいので避ける
  • とろみのある飲み物を選ぶ
  • さらさらのときは「とろみ調整食品」を混ぜる

さらさらの液体は飲み込みづらく、むせてしまうことがあるので、口の中でゆっくり流れるとろみのある飲み物がおすすめです。
市販品では、「飲むヨーグルト」や「野菜ジュース」、とろみのある「フルーツ飲料」などがあります。

好きな飲み物が「さらさら」系のときは、 「とろみ調整食品」も活用するとよいでしょう。温かい飲み物、冷たい飲み物でも溶けてとろみがつけられるものが市販されています。主にドラッグストアなどで手に入ります。

7.パーキンソン病患者さんのご家族・介助を行う方へ

パーキンソン病患者さんのご家族・介助を行う方へ

POINT

  • 食べている様子をよく観察する
  • 気づきのポイントを意識する
  • 変化に応じた工夫をする

嚥下機能の低下については、患者さんご本人でも気づかないことが大半です。そのため、身近にいらっしゃる方が「むせていないかな」「食べにくそうなものはないかな」など、日常をさりげなく観察してあげることが患者さんを助けることになります。

もし、そのちょっとした変化に気づくことができれば調理や食べ方についてのちょっとした工夫を取り入れることができます。「食事ができる」ことは、患者さんの体重や体調維持にもつながるとともに、日常生活の「(食事という)楽しみ」を守ることにもつながります。

気づきのポイントを参考にしてみてください。

【気づきのポイント】
・食事中にむせたり、食後に咳き込んだりする
・飲み込みにくい食べ物がある
・飲み込んだあと、口の中に食べ物が残っている
・食べ物や薬を飲むのに時間がかかる
・食後に声が変わる
・口の中に唾液が溜まる
・たんがよくからむ
・舌の上が白い

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